読書

なぜ山上たつひこを読むと小学生の頃の自分を想い出すのか

山上たつひこの初期短編集が出ている。山上たつひこと言えば「がきでか」である。もちろん愛している。「喜劇新思想体系」である。めちゃくちゃ好きだ。「光る風」である。ほとんどの台詞を覚えていた。今でも、山上たつひこの単行本はどこかに全部あるはず…

なぜ水俣病の小説をソニー・ロリンズで一気読みなのか

水上勉の「海の牙」を読んだ。 ひとりで家にいたので、通勤途中で半分読んでいたのを、でかい音でCD聴きながら一気に読んでしまった。こういう休日って久しぶりだがリラックスするなあ。水俣をモデルにした町が舞台のサスペンス小説である。有機水銀による公…

なぜいい歳になっても100エーカーの森を彷徨うのか

石井桃子さんが亡くなられた。ついこの前、インタビューを見たばかりだったのに。101歳まで現役の作家だったのだから凄い。石井桃子さんに恩義があるのは、やはりミルンの「クマのプーさん」を翻訳してくれたことだ。後年、ディズニーがやり放題で陽気な中年…

なぜのだめカンタービレの新刊は家族で奪い合いになるのか

二ノ宮知子の「のだめカンタービレ#20」が出た。娘が買ってきてくれたので、黙って金額の多い図書カードを渡す。やばいブツの受け渡しのような風景である。それぞれの思惑は違うかもしれないが、小学生と、もうすぐ大学生の娘と、主婦と親父が夢中になって読…

なぜ買う気が起きない本でも図書館で借りるとけっこう面白いのか

図書館が好きだ。本が好きなのはもちろんだけれど、本棚に囲まれた静かな空間が好きなのかもしれない。先日、青山一丁目界隈で時間を持て余してしまい、新しく出来た赤坂図書館を訪ねてみた。広い、きれい、趣味がいい。完璧だなあとうれしくなったが、残念…

なぜ通勤電車でも分厚い本を持って歩いては読みふけるのか

買ったまんま忘れられ、本棚から発掘された本シリーズ第二弾。 筒井康隆の「壊れかた指南」である。なんでかなあ、これ読んでなかった。昔の筒井康隆のような話と、それらしくない話の、振れ幅の広い短編集。面白かった。学生の頃に戻ったような読後感のもの…

なぜロマンチックな小説を読んでううとかああとか云っておるのか

藤原伊織「ダナエ」を読んだ。本棚にだらしなく溜まっていた本を片づけていたら買ったまま手を付けていない本が何冊も出てくる。情けない限りです。これはそんな中の一冊。藤原伊織さんはデビューは鮮烈だったのに、あまりにもそっけなく世を去られてしまっ…

なぜ漫画の評論を読んでわくわくしたり反省したりするのか

いしかわじゅんの漫画ノートが出た。いしかわじゅんの漫画評論は温かい。 誰もが、漫画は漫画で、作者はただの作者だとしか見ていないが、いしかわじゅんはちがう。僕らは漫画に物語を見る。いしかわじゅんは作者の中にも物語を見ているのだと思う。どんなジ…

なぜ分子生物学の本を読んでいるとオーボエの響きが聞こえてくるのか

初心忘るべからず、というのは志した頃の新鮮な気持ちを忘れるな、と言う意味ではない。俺って下手くそ、という満ち足りないイライラした気持ちを忘れるな、と言う意味である。と、教えてくれたのは年上の友達だ。うまくいかない、落ち着かない焦燥感こそが…

なぜ通勤途中で宮部みゆきを抱えて喫茶店に座り込んでいるのか

宮部みゆきの「火車」を読んだ。休職中の子持ちで男やもめの刑事が、甥から失踪した婚約者捜しを依頼されることからはじまるミステリーだ。ネタばれのおそれがあるので書きたいことが書けないのがもどかしい。いまさらなのだが、すっげー面白かった。主人公…

なぜ星新一の文体や考え方から未だに逃れられないのか

今でも星新一の影響下にある、と思う。 僕と同年配の人間は誰でも当時のSF界の影響を受けていると思うけれど、自分は特にそうだと思う。この本を読んで、鈍感にも、じわりと想い出しました。星新一の出自についてここまで詳細には知らなかった。大きな会社の…

なぜのだめを読んでアマゾンでクラシックのCDを注文してしまうのか

ようやく「のだめカンタービレ」18巻が回ってきた。娘や嫁が読み終わったからである。電車の中でカバーも掛けずに少女漫画に読みふけるおっさん(僕)は気味が悪いと思うが、ほかに暇もないので仕方ない。のだめのサロンコンサートでアンコールになってい…