なぜ山上たつひこを読むと小学生の頃の自分を想い出すのか

versaloft2008-05-27


山上たつひこの初期短編集が出ている。

山上たつひこと言えば「がきでか」である。もちろん愛している。「喜劇新思想体系」である。めちゃくちゃ好きだ。「光る風」である。ほとんどの台詞を覚えていた。今でも、山上たつひこの単行本はどこかに全部あるはず。

しかし、これはそれのずっと以前、貸本などに描かれていたSFをはじめとする作品群である。小学生の頃、虫プロからでていたCOMという雑誌があって、これを愛読していた。手塚治虫をはじめとして、石森章太郎、真崎守、宮谷和彦、長谷邦夫みやわき心太郎など、今思えば豪華絢爛な作家にまじって、不思議な味の短編を描いていたのが山上たつひこだった。この短編集「一軒家」はそれよりさらに古いものも含まれているようだ。構図の斬新さや、話の面白さは最初期でありながら早くも発揮されている。

黒いトレンチコートを来た軍人たちの存在感の凄さよ。影が真っ黒で、黒い靴の周りにハイライトが入っている、その凄み。ようするにこの人のマンガはセンスがいいのだ。石森章太郎も凄いと思うが、このひとは輪をかけて凄いと思う。

ああ、なんだかマンガが無性に読みたくなってきた。一巻1680円とマンガにしては高価で、カバーデザインも陰気だし、元々マニアックだから重版は難しかろう。早めに出ているシリーズは全館買ってしまおう。