なぜ渋谷の小さな名画座の行方が気になるのか

渋谷にシネマヴェーラという映画館がある。

本店通りの坂を上って、東急百貨店の近くまで出たらちりめん亭というラーメン屋さんの角を曲がる。そこは元々ラブホテル街であったはずだが、近頃は映画館やライブハウスなどができて、ずいぶん様変わりしている。その一角にシネマヴェーラという小さな映画館はある。

昔、といっても70年代の話だが、僕は高校生で渋谷の名画座によく来ていた。宮益坂の下、明治通りにあった全線座は洋画の名画座で、二本立てで150円だったと思う。当時でも破格に安かった。休みの日に渋谷へ出て映画を二本見て、スタンドのカレーかなにかを食べて、あとは電車賃も合わせて五百円札一枚で足りた。幸せな時代だ。「フレンチコネクション」とか、「ある愛の詩」とか、「小さな恋のメロディ」とか・・・いろいろ観ました。

シネマヴェーラは、そんな名画座の文化を今に残す、心意気のある、いい映画館だ。特集を組んで、毎日のように違う映画を掛けている。なかなか偉いものだ。
ところが僕のリズムと時間が合わないのか、なかなか訪ねられずに一年以上経ってしまった。同じ建物にはユーロスペースなどの劇場も入っているので、何度か来たことはあるのだが、なぜかシネマヴェーラには縁がなかった。作品を選んでいてはなかなか見るチャンスがないようなので、時間が合うときに掛かっている作品を見る、ということにして、えいやと行ってみた。演目は「夢野久作の少女地獄」。おどろおどろし〜い、ホラーのような、ポルノのような、不思議な映画だ。脇役には顔が売れてる人が多いが、主役級は全然知らない。うーん、これは珍品。大勢で暗闇に潜んでみるのが正しいだろう。

そんなわけで楽しかったので、また行ってみようと思うのでした。