なぜ地下鉄を待ちながらミッキーマウスマーチを鼻歌で歌うのか

versaloft2006-12-12


銀座線は東京で一番古い地下鉄だと言う。
その銀座駅のトイレは京橋側のホームの端、改札へ出る階段と浅草行き線路との隙間を、すれ違えないほど狭い通路を通った奥にある。ひょっとするとその存在を知らない人の方が多いのではあるまいか。
なにしろ狭い。男女のトイレマークが出ているものの、つまりそれは男女共用ということである。男性が小用をたしている後ろをすり抜けないと個室は使えない。若い女性と鉢合わせすると、こちらも気まずくて使えない。そうはいっても、ここで用を済ませておかないと渋谷駅はひたすら遠い。酔っぱらい親父としては使わないわけにはいかない。

きょうも止むなくこのトイレを借りた。珍しく誰もいなかったので気兼ねなく用を足していると、視界の隅、誰もいない個室に動くものが見えた。通り過ぎる電車の風圧を感じるような狭い場所だから、紙くずかなと思って見直すと、なんとちいさなネズミである。ピンポン球くらいの大きさの、黒い毛玉のような子ネズミが丸まったゴミのようなものと格闘しているのだった。1メートルほどしか離れていないところに僕が立っているのに、気がつかないのか逃げる気配もなく長いしっぽをゆらしてゴミにかじりついている。無邪気なのかずうずうしいのか。

そのあと、あの男女兼用の穴蔵のようなトイレに勇気を出して駆け込んだ女性は、どんなに驚いたことであろうか。気の毒で仕方ない。