なぜ9月は異動の季節なのか

借り物の終電写真


もはや終電である。乗客が皆降りたあとの車内に、花束が落ちている。そばには誰もいない。寝過ごしたお客を起こして廻っていた車掌が、あたりまえのように花束をひろって、そのまま酔っぱらい客たちを起こして歩いていった。9月は会社員の異動の季節なのか。異動に縁がない職場にいるのでよくわからない。どこかで歓送迎会があるたびにおおぜいの酔っぱらいと、花束の似合わない酔っぱらいが生産され、その積もり積もったものが電車の車内にあふれる。いつもは自転車通勤なのでそんな風景も見ずに済むのだが、雨の日はそうもいかない。しかも自分は素面である。醜態を見て寛容であれと云われればそうもできるが、いやおうなく目に入ってくるので困る。あの花束のそばに座席を占領するように寝こけていたおっさんがいたが、彼の花束なのだろうか。何の花だろうか。紫のトルコギキョウとか、いずれおっさんに似合わない花だったに違いない、と考える自分がいる。車掌はあの花をどこかの花瓶に生けるのだろうか。ゴミになったら悲しいな。