なぜウサギの寝床が空になっているのを見ながら飲んでいるのか

昨日までは、つかこうへいが亡くなったので、その話を書こうと思っていたが、気が変わりました。

我が家の年老いたウサギが、他界したのであります。
ホーランドロップイヤーという種類のウサギで、耳が大きく、垂れている。名前をみみうといった。

長女が中学生のとき、お年玉を貯めて「うさぎのしっぽ」というペットショップに買いに行ったのだ。すでに一緒に生まれた兄弟姉妹は全部引き取られていったあとで、一匹残っていた。器量が悪かったからだという説もあり、長女を待っていたのだという説もある。いずれにしても、ちょっとトウのたった子ウサギは我が家の一員となった。

群れで成長した分だけ躾けは出来ていて、ちゃんとトイレで用を済ます賢いウサギだった。ウサギは食べて寝るのが仕事で、特に昼間はじっとしている。ときどきケージの外に出されると、勝手に部屋の中を散歩するのだった。大きな足で床を「どんっ」とならすことも出来た。娘によれば、あれは警戒音なのだという。ウサギはふつう鳴かないのだが、怒ると「ぷーぷー」と声を上げて抗議した。

娘たちが餌をやったり小屋を掃除したりすると、ケージから出ては彼女たちの周りをぐるぐる走り回った。餌が欲しいとケージの扉を銜え揺すりたて「がががががっ」と大きな音を立てた。

身繕いがかわいらしい。立ち上がり、前足で大きな耳を抱えて撫でるのである。片耳ずつ、シャンプーする長い髪の女性のように丁寧に身繕いをする。前足を前に出して細かく動かし、顔も洗う。いちいちかわいらしい。

晩年は目が見えなくなったようだが、くらいところが得意なウサギだけに、さほどストレスではないようだった。固形のラビットフードを食べ、ときどき生野菜をもらい、撫でてもらい、遊んでもらう毎日だった。

ここ数ヶ月は足腰が弱ったのかトイレの僅かな段差を越えられず、粗相も目立って来た。とはいえ、夜中にばたんばたんとケージの中のものをひっくり返して暴れる事もあるので、8歳位近くなっても、まだ元気だと思っていたのだ。

昨夜僕が帰るとヨメと長女がしょんぼりしている。
静かなので見てみたら、足を伸ばした夏の睡眠ポーズのまま息をしていないのだという。気がついたときにはまだお腹が温かかったというから、家族がざわざわしている時間に息を引き取ったのだと思う。動かないみみうを撫でてみると、すでに頼りない。生き物の気配が消えている。

高価な家具を齧ったり、ソファの影でおしっこしたり、叱って悪かったなあ。何倍も我が家に貢献したよ。いい人生だったかい?ウサギだから人生じゃないか、浮き世とかそういうもんかな。楽しかったんならよかった。オランダで狐に追われて逃げ回るより、穴を掘りまくるより楽しかったことを祈る。

ありがとう、みみう。
さようなら、みみう。