なぜ本栖湖で10km走ったあとでもバタバタ走り続けるのか

佐渡紀行をさぼって、昨日のランニングの事を書く。

本栖湖で行われたNike Human Race 10kというイベントに参加して来た。富士の麓にある本栖湖を走って一周する、というシンプルなイベント。でも天下のNikeがやるイベントであるから、そう簡単には終わらない。なんでもレースの後でどんちゃん騒ぎのコンサートがあるらしい。参加者が8000人とも云われるビックイベントだ。エネルギーを持て余した若者の祭典だ。

なんでそんなものに僕のようなオッサンが参加したかというと、まあ、それが勢いの恐ろしさである。nike+というiPhoneで使えるアプリがあって毎日のランニングの記録を録っておけるのだが、記録するたび自動的ににnikeのサイトにアクセスするのである。ある日、そこにイベントのお誘いが出ていたのであります。で、おもわずポチッとしてしまったというわけ。

何しろ毎日走っているものの、それは5km程度なので、いったい10kmをノンストップで走れるのかどうかは極めて怪しい。試しに走ってみりゃあいいじゃねえか、と思われるだろうが、なかなかそうは行かないのが世の常というものなのである。自分の限界も分からぬままに、いつのまにかレース当日となり早朝の高速バスに乗っていたのであります。

土曜の朝7時ともなればとうぜんガラガラかと思ったら、さにあらず。臨時便を含めて4台もバスが出ている。しかも満席。これはレースに出る人で一杯なのかと持ったら、そうではなく富士急ハイランドで大半が降りて行ったので、ははあ観光の人だったのかとおおいに感心する。日帰りで丸一日遊ぶためだったのね。

このバス、片道が1700円というのは安い。ネットでチケットを買うと1660円である。新宿から河口湖まで1時間45分。JRの特急経由だと、時間は同様なのに指定席券込みで4200円もするのだ。バスに人気があるのは当然だろう。しかし、美味い話には罠もあるのである。ひとつは同乗する若者たちの喧しさだ。小学生の遠足バスに乗り合わせたようなはしゃぎ方である。日頃、娯楽というものがないのだろうか。それとも、よっぽど抑圧されているのだろうか。考えていても仕方ないので、さっさとiPodのイヤフォンをつけて避難する。

もうひとつの罠もすぐ明らかになった。ウトウトして気づくと、30分経っている。ここどこだ?まだ調布?中央道、きょうは混んでるなあ。土日は高速が1000円だからなあ。
で、また寝る。再び目覚めると8時。あれ、競馬場が見える。まだ府中だよ。結局、大渋滞の中央道のおかげで、八王子の料金所を抜けたのは8時半過ぎでした。ダイヤ通りなら8時55分に河口湖に着く予定だったのになあ。時間の余裕がないとこのバスは使えないな。河口湖駅に到着したのはすでに10時近かったのでありました。

主催者側の案内では9時30頃には会場へのシャトルバスは終わってしまうらしいし、さてどうしたものか。間に合わないのなら温泉でも入って帰るか、と思っていたが、河口湖の駅前にはまだスタッフがいた。「あそこのバスに乗ってください!」という案内があり、やれやれ遅刻組を拾ってくれるらしい。ありがたい事である。

シャトルバスはゆったりと進み、11時のスタートまであと20分、というとてもいいタイミングてスタート地点のすぐ近くで降ろされた。本来はゴール地点のイベント会場へ連れて行かれ、荷物もそこで預けてから、ぞろぞろ歩いてスタート地点まで移動しなければならないのだ。しかも遅刻者用にクロークも臨時のものがちゃんと設営されている。いいぞ、Nike。遅刻に優しい。

富士山麓の天気も薄曇り。風もなく走るにはいい気候だ。本栖湖の湖面に映る紅葉も美しい。が、それはつまり寒い、ということだ。7時半から会場は開いていたらしいが、そんな場所にTシャツと短パンでいたら凍えてしまう。遅刻したのが幸いして、ストレッチしているうちにスタート時刻だ。司会者が懸命に盛り上げ、そろいの赤いシャツを来たランナーたちがキャーキャー騒いでいる。

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申告タイムの速い順にグループ化されて、一定間隔でスタートする。タイムはシューズにつけたチップで記録されるから、いつ出発しても問題はないのだが、ペースの違うランナーが混ざると混乱と渋滞が起こる。適切なシステムである。

僕は10kmは初挑戦なので、いつも30分で5kmを走っているのだからと、ちょっと余裕を見て1時間15分と申告した。ゆっくり走って完走、が目標だから。このペースだと、後ろから2つめのグループである。参加の条件が1時間50分以内、だったから、まあ、そんなもんだろう。僕らのグループは11時20分くらいにスタートした。

道路は片側車線をランニング用に規制して、もう半分をクルマが通れるようにしている。道は広いので走りやすい。が、実際は走りにくい。前のグループがだらだらと道を塞ぐからである。まあ、お祭りなんだし、本気で走っている人は少ないんだろうけど、それにしてもゆっくりすぎ。抜かせるところではどんどん抜かさないと走りにくくて仕方ない。かなり速いタイムで申告したはずのグループ(アームバンドでわかる)でも、遅い一群がいるのでどんどん抜かす。みんな申告タイムいいかげんすぎ。これをちゃんとすればもっと走りやすいのになあ。前に出たくて対向車線にはみ出すアブナい輩も減るであろう。

本栖湖の景色はほんとに美しいなあ。走っていて景色を眺めるというのはいいものだ。ところどころ、紅葉の森の湖畔を、ヒガンバナのように真っ赤なシャツを着たランナーたちが流れて行く。いい眺めであります。

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給水ポイントも2カ所あって、適切。距離表示も分かりやすい。ときどきNike契約アスリートの「名言」が書かれた看板があって、それも楽しい。マイケル・ジョーダンとか、ランス・アームストロングとか。

タイムが遅いグループで出発したせいもあるけれど、参加者は女性が半分、いやむしろ多かったんじゃないかなあ。距離も気軽だし、楽しいイベントもあるしで、女性にも敷居が低いのか、それとも最近のランニングブームを正しく反映しているのか。

ばたばた走っているうちに9kmの表示まで来たので、ここから先はスピードを上げてみた。けっこう余力があって、ゴールが見えて来てから最後はダッシュした。正式記録はまだわからんのだが、iPhoneの記録では55分。これはいいかげんなのでたぶん60分ちょうどくらいかな。目標には届いたと思いたい。

ゴールで水をもらって、バナナをもらって。他にも楽しそうな食べ物コーナーが軒を連ねていたのだけれど、何しろ次の予定があったのでゆっくりしてはいられない。夜には池袋でクラリネット教室の発表会なのだ。荷物を受け取って、路線バスの停留所までふたたびダッシュする。ああ、きょうは走ってばっかりだ。