通夜と告別式で飾るために過去に撮りためた写真の中から、先生の肖像を選ぶ。
ソファで寛ぐ様子など、表情の優しいものを選んだが、一枚だけは指揮台に立ち指示をしている写真。晩年はいざしらず、古い教え子なら震え上がるようなシーン。

すべてモノクロであるので、普通の現像屋さんでは時間の折り合いがつかない。製版用のスキャナを持っている会社に無理を言って、取り込みと出力をお願いする。当然写真の粒子とは異なり、印刷物のような網点になるのだが、かえって絵としてはソフトで階調が美しくなったかもしれない。フレームを調達して、6点すべてを額装する。

夜遅く、これを携えて先生宅へ急いだ。