なぜデミグラソースと半熟卵の混ざり合った皿を未練げに撫でているのか

versaloft2006-10-24


京橋界隈のホワイトカラーが集う場所といえば、ご異論もおありでしょうが明治屋地下にある「京橋モルチェ」です。
とにかく古い。戦前から建っている明治屋ビルの地下、銀座線への入り口を入っていくとサンプルの並んだウィンドウがあり、むかしの「ハイカラ」な食堂になっている。ちょっと高めの天井。年代物の大理石で飾られた柱。創業当時の銀食器がガラスケースに誇らしげに飾られている。と書くと由緒ある高級レストランという感じだが、実際には四角いテーブルがフロアせましと並べられ、満員になると隣のテーブルとの隙間が少ないので、出入りに気を遣うほどだ。わが社の新入社員(女性)に云わせると「デパートの食堂みたい」なんだそうです。

この店の特殊なところはむしろ客層にある。
夜、といってもまだ早い時間。6時ごろ、ひとりでテーブルに着いている老紳士がいる。ひと目で高価と知れるオーソドックスな背広。姿勢が良く、その様子はまさに鶴のようである。新聞を小さくたたんで読んでいる。そこへウェイトレスがキリンの小瓶と、サンドイッチを運んでくる。新聞を丁寧に置き、めがねを外しながらウェイトレスに礼を言う。年かさのウェイトレスはほほえみながら小さなグラスにビールを注いでいる。老紳士はゆっくり、時間をかけてビールとサンドイッチを平らげる。そして煙草を一本だけ吸うと、勘定を済ませ、よく磨かれた靴の音を響かせながら階段を上っていく。そこには黒塗りの大きなセダンが停まっていて、きちんと帽子をかぶった運転手といっしょに主人の帰りを待っている。
まあ、そんな感じのお客さんが時々いるレストランです。

いらんことを書いてしまいましたが、ここ僕が出たべるメニューベスト2は「ハンバーグ」と「チキンカレー」だ。
これらの料理はランチも夜も関係なくメニューにある。店が開いていればいつでも食べられる。味や内容の説明は、あんまりしたくない。言葉にすると、なんだかふつうのメニューになってしまいそうだから。でも違うんだよなあ。ハンバーグはライスも頼むと1260円になってしまいますが、僕は全く躊躇しない。ここのハンバーグより美味しいハンバーグはあると思うが、ここのハンバーグはここにしかない。(きっぱり)

写真はHOTPEPPERさんのページから拝借しました。