なぜ人間ドックへ行くのにドキドキしたり悩んだりしているのか

人間ドックを受けるためにはさまざまな障害がある。まずは検尿。前の晩、夕食後2時間後に採尿する。検便は2日分採集する。さらに病歴だの自己診断だのやたらに多い調査票を記入しなければならない。さすがに気が重い。

検便は困りものである。和式の便器ならブツが安座されているので雑作もない。が、洋式の便器ではそのままだと水の底に沈没してしまい、採取ができぬ。で、便器に逆に腰掛けろとかトイレットペーパーをたたんで敷けとか指示が書いてあるのだが、実際難しい。惚れ惚れするようなブツが出たというのに沈没させ、なんど悔しい思いをしたことであろうか。タイタニックの船長の気持ちもわかるというものだ。

今回感心したのはしっかりした紙が付属していて、これを便器の中に敷け、というのである。なにやら的のような模様も印刷されている。この紙はすぐには水に溶けないが、ブツをのせたまま安定し、採集後はそのまま水に流せるのだという。なるほど、これは便利だ。新兵器を考えたひとは偉い。

しかし。

定期的に出るとは限らないのである。鉄道のダイヤにもウンコウの乱れというものがあるように、自宅で用が済まないこともある。で、しかたないので持ち歩くことにした。外で回収するためである。いつ兆しがあってもいいようにポケットに入れておく。採集の容器はシャープペンの芯ケースのようなコンパクトなものなので、「さりげなく」持ち歩ける。付属の紙はかさ張るので置いていく。

来た。

会社のトイレに行き、新兵器はないが、なんとか用を済ます。さて、と探るがあれれ?ポケットに、ない。検便容器が姿を消している。これは困った。かばんの中にあるとしてもデスクまで戻らねばならない。しかしその間、ブツを残したままウロウロすることもできぬ。しばし、腕を組んで考えた。結論は今回のブツにはお引き取り願い、再生産に精力を傾けるという結論に至った。すまない気持ちでお見送りをする。

机に戻ったが、検便容器は見つからない。仕事の電話が入って、金やスケジュールの込み入った話をするが、実は心ここにあらずである。俺の検便容器はどこにあるのか。いつ、「ピンポンパン♪ 落とし物のお知らせです。検便容器を落とされた方は・・・」という社内放送があるかもしれぬ。

一日じゅうドキドキしながら過ごしたが、結局社内では発見されなかったようでほっとしたが、ほっとしてばかりもいられない。人間ドックにはなんて云えばいいのかな。これで検査結果が出ないと困ります。

それはともかく、どこかで僕の検便容器を拾った方には申し訳ない気持ちです。それが昼飯の前だと、特に申し訳ない。