なぜ身軽な旅なのに途中で観光しようと思わないのか(佐渡紀行 その3)

ああ、佐渡の話をどんどん書かないと忘れてしまう。まだ両津の港から走り出したところだった。

佐渡に来たのは初めてなので、右も左も分からないのだが、とにかく海を右に見て進めば、やがては目的地にたどり着くはず。船から見た佐渡は、山が海に向かって押し寄せていて、海との僅かな隙間に町がある、という印象だったが、はたして道は陸地の端、海に沿って延びている。
佐渡を地図で見ると大きなコッペパンを2つずらして置いたような形をしている。その狭間には平野があって田畑も町もあるようだけれど、外側はいたって険しいものなのだなあ。

さっきお昼に食べたアワビは厚切りでうまかったなあ、などと暢気な事を考えつつ、両津から北に向かい国道45号線をひたすら走って行く。

クルマは滅多に通らない。時々長いトンネルがある。道沿いにはコスモスが咲いている。スピードを出す気はないがアップダウンもあり、平均で22,3km/hというところだろう。風景は、漁村があり、しばらくいくとまた漁村がある、という繰り返しだ。

30kmほど走ったところから坂がきつくなる。コッペパンの先端は山に回り込んで越えて行く道ばかりなのである。山あいに入ると周囲は稲田で、どこも稲刈りの真っ最中だ。その様子が懐かしくも美しい。
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弾崎灯台の案内板がある。寄り道したい気もするが、ここで観光してしまうとその後走るのが億劫になると思い、先を急ぐ。海沿いは奇岩が海にあって傾いて来た日に照らされて不思議な風景になっている。美しい風景とはうらはらに、かなりきついアップダウンがあり、道も狭く、苦しい。

真更川というところの民宿「中島旅館」に予約を入れておいたので、そこが初日のゴール。だいたいの地図は持っていたのでバス停を頼りに宿を探した。ここかなあ、というところにレンガ色の建物があったが看板が出ていない。玄関に回ってみたが、誰もいない。玄関も閉まっているし、ここじゃないのかなあ、と思ったら電話がかかって来た。着信に「中島旅館」とある。あれれ?なんでだ?その電話は、はたして女将さんからだった。「きょうは稲刈りでみんなでちゃって〜、ごめんなさい、あと20分くらいで戻ります」なんだかいいなあ。

両津を出たのが1時くらいで、旅館に着いたのが3時。初日は42kmの走行距離だった。

他には泊まり客もいない。でも大きな風呂が沸いているのが嬉しい。洗濯機でウェアを洗い、荷物の整理や確認などしているうちに日はすぐに傾いて来た。この宿からの眺めは素晴らしい。日本海に沈んで行く夕日がきれいだ。ビールを飲んで、ちょっとウトウトしていたら、食事に呼ばれた。さすがは佐渡と思う美味しい魚がたくさん出て、食べきれない。お米がおいしい。もう新米なのだなあ。

続きはまたこんど。