なぜ、いつも僕らは結果を早く求めてしまうのか

ちょっと前、NHKで代々木の森のルポルタージュ番組をやっていた。

明治神宮の森の話は前にも書いたけれど、僕はこの森が大好きだ。風景としても好きだが、これがほとんどすべて人工の森だという事実を尊敬するのである。

外国からの観光客はもちろん、それと知らぬ人が見れば、この広大な森は原生林にしか見えないだろう。しかしほんの80年ほど前はほとんどが原野の練兵場で、今の森は神宮建設の際に庭師たちによって「計算尽く」で設計されたものなのだという。テレビで初めて知ったけれど、すぐれた園芸学者のリーダーシップも存在したらしい。

針葉樹と常緑樹の成長のスピードを計算し、30年後、50年後、80年後、最終的には150年後の姿を考えて「デザイン」された森なのだ。当然、設計者はとうにこの世を去っているし、その間、戦争もあって全てが計算通りとは思えないが、少なくともこの技術は世界でもまれだろう。本当に高いレベルのスキルとは、こういうものを言うのだ。金融工学などと騙って、証券や債券をやりくりする知恵の浅さとは比較にならない。マーケティング屋の一人としても、いつも結果を早く出すことばかりに駆り立てられることを恥じ入るばかりです。

ガウディの教会がいまだに建築中なのを知って感心する日本人の、どれほどの人がこの遠大な森の計画を知っているだろうか。

写真は明治神宮のHPから拝借しました。