なぜ新卒でうろうろする阿久悠の姿が面白いのか

阿久悠が亡くなってから2年経つ。

たまたま図書館のリサイクル本コーナーで拾った本が阿久悠の自伝的小説「無名時代」だった。達者な作家だから文章はこなれているし、大学を卒業して広告代理店に入って、放送作家として独立するまでが青春ものとして描かれているしで、とても面白く読めた。まさしく拾い物だ。

まだ昭和34年当時は民放そのものが曖昧な存在で、テレビCMがビジネスになり始めたばかり。その時代を知る作者が描く代理店の様子はとてもリアルで興味深い。ああ、そうなんだ。広告収入が減ったと大騒ぎしているが、テレビ業界の隆盛はまだほんの50年前には考えられなかったのだものなあ。それがちょっと元に戻っているだけだ。

この小説、面白いのに文庫にもなっていないみたいだ。

無名時代

無名時代